名古屋市立大学文藝部のホームページへようこそ

小説のお約束

はじめに

文藝部として知っておいたほうがいい、小説のお約束のこと。
既に知っている人にはサシデガマシイことですが、知らない人はぜひ知っておいてください。
いくらすばらしいものを書いても、こういう基本をしっかりしておかなければすばらしさ半減です。

1. 「段落のはじまりは一マス空ける」

段落のはじまりは一マス空けなくてはなりません。
ただし括弧類ではじまる場合は一マス空けないことが慣例です。
実際に一マス空けて括弧を使ってみれば分かりますが、
必要以上に文頭が下がっているように見えてしまいます。
ただし、昔は括弧類も一マス空けて書く作家も多かったようです。
それに倣い括弧類の前にも一マス空ける、とすることが別に悪いことではありませんが、
括弧の前にも一マス空けるなら一作品全部そうするべきで、併用すべきではありません。

2. 「!や?で一文を終える時は、そのあとに一マス空ける」

!や?で一文を終える時は、その直後に一マス空けなくてはなりません。
    例)「あの地球人のように? クリリンのことか……」
句点の場合、記号が小さいため分の末尾につけその後にさらに文を重ねても、
視覚的に簡単に文の切れ目であることが分かります。
しかし外来記号である!や?は記号が大きいため、
その後にすぐ文を続けた場合空間的な切れ目が認識しづらいことから生まれたルールのようです。

3. 「…… や ―― は、必ず2マス分続けて使う」

……(三点リーダー)や――(リーダー/ダッシュ)を使う時は、必ず2つ続けて使います。
ただし、「…………」のように会話文の中でそれだけで使う時は4つ続けて使います。
最近ではこの原則を崩している作品もちらほら見かけますが、基本は基本として知っておくべきでしょうし、
原則を崩すことに意味が感じられないのであれば守っておくに越したことはありません。
原則になっているということは、それなりの意味があるからなのです。
実際、リーダーの個数が出るたびに違うと統一感がなく、作品の印象に関わってきます。

4. 「括弧を閉じたときには、文末の句点などは省略する」

括弧を閉じたときには、文末の句点などは省略します。
昔の作家さんは句点の後に閉じていますが、最近は句点を省略するのが一般的です。
もちろん、省略しないことで何らかの効果を狙うのであれば遵守する必要はありません。
例えば長野まゆみは積極的に会話末に読点をつけて、会話の遮りを表現したりしています。

5. 「縦書きの場合の数字は漢数字を使う」

星新一の小説に出てくる登場人物は、大抵エヌ氏だのエス氏だったりしますが、
これは縦書きでN氏、S氏と書くとアルファベットが文中から浮き出て見えるから、
あえてカタカナ書きをして文の中に埋没させるためなのだ、と彼はエッセイで書いています。
そこまでこだわることはありませんが、数字やアルファベットは日本語の中では浮いて見えますから、
何らかの工夫が必要です。特に数字は、漢数字を使うことが慣例となっています。

6. 「敬体と常体は混在しないように」

です、ます調で地の文を書いているなら途中で、だ、である調を混入させないようにします。
繰り返しになりますが、統一感があれば、変則的なこと(もちろん、しないに越したことはありません)をしても、
多少は読者に理解してもらえる可能性がありますが、
それがまちまちだと単に小説を書くのが不慣れであると思われて終わるだけです。

7. 「引用する場合は出典を明示する」

小説内で引用を行う場合は引用部分を「」でくくるなどし、引用したことを明らかにしなければいけません。
また出典元を必ず作中か作品の最後に記載しましょう。
また引用できるのは著作物の一部分です。引用しすぎてはいけません
質的にも量的にも引用部分は本文よりも軽い必要があります。
引用のルールを守らないものは盗作とみなされてしまいます。

おわりに

他にも約束事や暗黙の了解、効果的な手法はいろいろあります。
たくさん小説を読んだりして勉強していってください。
    『小説のお約束のこと ver.1.0』 文責:奥村

トップへ戻る